2015-04-28 自民、維新、次世代3党がカジノ法案再提出(産経ニュース)
自民、維新、次世代の3党は4月28日、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)整備推進法案を衆院に再提出した。ギャンブル依存症対策として日本人のカジノ施設への入場を制限する規定を新たに盛り込んだ。公明党はカジノ解禁への慎重論が根強く、法案提出には加わらなかった。
Association for Business of Integrated Resort
自民、維新、次世代の3党は4月28日、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)整備推進法案を衆院に再提出した。ギャンブル依存症対策として日本人のカジノ施設への入場を制限する規定を新たに盛り込んだ。公明党はカジノ解禁への慎重論が根強く、法案提出には加わらなかった。
2020年東京五輪までのカジノ開業に向け、超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(会長・細田博之自民党幹事長代行)が成立を急ぐ統合型リゾート施設(IR)整備推進法案の国会再提出が遅れている。当初、3月末までの再提出を目指したが、難色を示す公明党と調整がつかないためだ。今国会は政府提出の重要法案が立て込んでおり、今国会での成立も微妙になりつつある。
「党の関係部会で検討するのが最初だ。いつ結論を出すかは議論になっていない」。公明党の漆原良夫中央幹事会長は16日の記者会見で、IR法案への対応について党として結論を急がない考えを示した。
IRは民間事業者によるギャンブルを法的に認めることになる上、ギャンブル依存症患者の増加が懸念され、一部メディアの世論調査ではカジノ合法化への反対が賛成を大きく上回る。統一地方選まっただ中だけに、公明党にとってIR法案の提出はできるだけ先送りしたいのが本音だ。
ただ、今国会で成立させられなければ、2020年のカジノ開業には“黄信号”がともる。不正行為防止策やギャンブル依存症対策などを盛り込んだ「実施法」策定や、立地の選定、計画立案などの作業に5年は必要とされるためだ。
公明党抜きでも、賛意を示す維新、次世代の2党と自民党がIR法案を提出すれば、数の上では衆参両院で可決できる。ただ、その場合でも国会審議がスムーズに進むとはかぎらない。
IR整備の検討チームが内閣官房に設置されているため、IR法案は衆院内閣委員会で審議する運びとなる。内閣委は女性活躍推進法案や個人情報保護法案など政府提出の重要法案を抱えており、IR法案は後回しになる可能性が高い。
もっとも、自民党も「内憂」を抱えている。参院自民党が15日に開いた政策審議会の勉強会では、IRをめぐり「カジノをやればもうかるという錯覚が広がっている」「収益も上がらず、社会的な問題だけが残る」と慎重な議論を求める意見が続出した。
「公明党が認めてくれるなら、法案の内容でどこまでも妥協していい」自民党幹部からはそんな声も漏れ始めているが、党内にも慎重論が広がる中では法案の成立は見通せない。
京都市で開かれていた「第53回関西財界セミナー」(関西経済連合会、関西経済同友会が主催)が6日、閉幕した。「関西から我が国の持続的成長をけん引していくという強い意志を共有する」との宣言を採択。新たな成長モデルを創出して、地方創生を関西の経済界が主導することで一致した。
2日間の参加者数は623人で過去最多だった。関経連の森詳介会長(関西電力会長)はセミナー終了後の記者会見で「実践的な議論を行ってもらった。産官学で連携してしっかりとしたアクションにつなげていきたい」と話した。
森会長が関西の持続的成長に向けた取り組みの一つに挙げた外国人旅行客の拡大策について、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の誘致に期待する意見が相次いだ。新関西国際空港会社の福島伸一会長は「2020年は、東京は五輪、関西はIRという双発のエンジンでバランスのとれた成長を目指し、一極集中を是正する」と説明した。
ユアサM&B(大阪市)の松田憲二社長は「IRができれば関西の経済効果は非常に高まる。東京と関西で日本を動かすようになれば地方創生につながる」と述べた。関西同友会の村尾和俊代表幹事(NTT西日本社長)は「オール関西のIRという観点で進めることで経済活性化の起爆剤になる」と強調した。
ただ、京都銀行の柏原康夫会長は「京都にはカジノはそぐわない」と否定的な発言も出た。国立京都国際会館は拡張計画が進んでおり「競合施設ができたら、両方で海外からの会議を受け入れてやっていけるかとの懸念は整理しておく必要がある」と語った。南海電気鉄道の山中諄会長は賛成の立場を表明したうえで、ギャンブル依存症の問題を例に挙げながら、「IR推進には丁寧な説明が要る」と述べた。
IR(統合型リゾート/Integrated Resort)が日本における成長戦略の柱のひとつとして、国や地方自治体をはじめとして、産業界からも注目を集める中、2014年7月31日(木)、大阪市内で「IRビジネスフォーラムOSAKA」が開催された。当日は、関西はもちろん、全国から多数のビジネスパーソンが来場。出席者は1116名、講演会終了後に開かれた交流会にも307名が参加して、熱心な情報交換の場となった。関西が名乗りをあげ、日本でのIR導入への期待と可能性を示した当日の講演の抄録をここに紹介する。
IRが関西の成長戦略を推進(松井一郎大阪府知事)
人口減少社会を迎える中、世界に類を見ないIR(統合型リゾート)を大阪に立地することは、関西および日本全体の成長に大きく寄与すると私は確信している。IRはカジノだけではない。
コンベンションやエンターテインメントなど、多彩な魅力を有するからこそ、各国からビジネスエグゼクティブ、研究者や文化人などが訪れ、価値ある情報発信や新たなビジネスが生まれるのである。
関連産業の裾野も広く、大きな雇用創出効果も期待できる。大阪府民・市民の理解を求めながら、IRを核とした「東アジアの情報文化創造発信拠点・大阪」を目指したいと考えている。
基調講演(寺島実郎 一般財団法人日本総合研究所理事長)
昨年、日本の1人当たりの国内総生産(GDP)はアジア3位、世界24位だった。今年は香港に抜かれると予想されている。「アジアの先頭を走る日本」という幻想を捨て、過去の成功体験を超えた新しい発想が問われている。
考えるべきはサービス業の高付加価値化だ。今、日本では年収200万円以下で生活する人が就業者数の34%を占め、過去10年間で製造・建設業からサービス業にシフトした約500万人の年収は平均150万円以上も下がった。今後はサービス業従事者が安心して人生設計を立てられる社会を創る必要がある。
国内活性化策として期待がかかる観光だが、格安ツアーの量産だけでは観光立国は成り立たない。フランスやスイスなどの観光先進国はハイエンドなリピーターを引き付ける知恵とスキームを持っている。そういった意味でIR(統合型リゾート)の果たす役割は重要だ。カジノを含め、IRの付加価値をどう高めるかという構想力が立地する地域に問われている。
そこで注目したいのが教育だ。大阪の場合、エンターテインメント産業を支える育成機関を作り、アジア太平洋地域から集まった人材がIRやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を担う形態が考えられる。新しい産業分野としてのIRを民間主導でどう運営するかは、知恵の出しどころ。私は関西がその先進モデルとなることに期待している。
講演(仁木一彦 有限責任監査法人トーマツ)
IRの市場規模は全世界で10兆円。主要な事業者の売上高は1兆円規模。いずれも各国の証券取引所に上場し、厳しい市場と国家の規制の中で成長している。IRは裾野の広い産業であり、経済効果は税収と雇用面で顕著だ。
2005年以降の主要なカジノ施設はIR型だが、世界の有力IRではカジノ以外の非ゲーミング部門の売上が増え、ラスベガスでは60%を超えた。今後アジア各国でIRが建設される。日本のIRはそうしたライバルとの国際競争に勝ち抜いていく必要がある。
大阪と関西はその競争に勝てる力のある場所だ。経験豊かな外資と日本の魅力を反映できる日本企業がタッグを組み、勝てるチームで勝負を挑むべきだ。
講演(トッド・ニスベット メルコ・クラウン・エンターテインメント取締役)
メルコ・クラウン・エンターテインメント(MCE) は、ローレンス・ホーとジェームズ・パッカーが共同で創設。東洋と西洋の魅力の融合を目標に、一流エンターテインメント・IR企業としてオーストラリアとマカオで成功を収めてきた。
MCEのIRは都市景観のシンボルとして、また観光客を呼び込む起爆剤として、経済を活性化し周辺地域に貢献している。例えば豪州パートナー、クラウン・リゾートが運営するメルボルンのIRには年間1800万人が訪れ、地域人口200万人のパースのIRには年間800万人が訪れている。3万1000人の直接雇用、年間8億豪ドルの税金支払い額を含めた経済効果は30億豪ドル以上となる。これらの成功実績を基に、大阪でも同様の経済効果と持続可能な成長を提供し、2020年までに訪日観光客2000万人目標を共に達成したいと考える。
IRというとカジノばかりが注目されるが、MCEのIRは非カジノ要素が充実しており、ことにシティー・オブ・ドリームスのフラッグシップであり累計動員250万人を超す世界最大のウォーターショー、ハウス・オブ・ダンシング・ウォーターをはじめとしたエンターテインメント分野の素晴らしさで、極めて高い評価を得ている。また、IRには社会的セーフティネットが不可欠だが、MCEはこの分野でも世界的トップリーダーと目されている。
IRは国や地域の特性に合わせて作ることが大事だ。MCEはラスベガスと同じものを作るのではなく、豪州のクラウン・リゾート、アジアのMCEの20年にわたる経験を活かして、大阪でしか体験できない世界一流のIRを提案し、大阪、関西の人々と共に実現したいと考える。
講演(ジョージ・タナシェヴィッチ マリーナ・ベイ・サンズ社長兼CEO)
日本のIR導入にあたり、シンガポールの事例は参考になるだろう。人口540万人の同国には年間1550万人の観光客が訪れ、1人当たりGDPは5万5183米ドルでアジア第1位だ。その発展に寄与したのが米ラスベガス・サンズおよびマリーナ・ベイ・サンズ(MBS)である。
IRというとカジノばかり注目されるが、MBSは会議や見本市といったMICE重視型のIRである。私たちの会長兼CEOはMICE運営に40年以上の経験を持ち、MICE重視型IRを世界各地で成功させてきた。大阪は都市別国際会議開催件数で世界117位だが、MICE重視型IRはその地位を高める。
MBSでは純粋なカジノ面積は3%未満だが売り上げに占める割合は高く、カジノからの多大な収入により、日本でも話題の屋上プールを含むスカイパーク、美術館、博物館などが維持されている。さらにカジノ併設により税金を使わずにMICEが経営できる。シンガポールではカジノ入場税を徴収し厳しい入場規則を設けている。官民あげて社会的セーフティネットを整備した結果、IRオープン前後を比べてあらゆるギャンブルへの国民の参加率は減り、ギャンブル依存症の数も横ばいだ。
MBSの投資額は56億米ドルだが、その結果、2015年までに、3万7000人の直接・間接・誘発雇用を生み、GDP貢献率1.26%到達が見込まれている。また2013年実績として、物資の92%を国内調達し、来訪者増加で、周辺ホテルの客室稼働率と単価も上がった。既存の産業や企業を補完し、誰もが恩恵と成長を享受できるIRを私たちは目指す。
講演(美原 融 大阪商業大学教授 アミューズメント産業研究所長)
IR(統合型リゾート)は、ビジネスとエンターテインメントの両面をカバーする多機能なリゾート複合施設だ。施設の一つにカジノが含まれるが、その理由はカジノが支出効果の大きい集客装置であることだ。利益率が高いため、宿泊や劇場など投資回収に時間がかかる他の施設と一体化することでハイグレードな大規模施設の実現が可能になる。
特に期待されるのが海外からの来訪者の誘致と、それに伴う地域の活性化だ。IRの設置地域は国によって選定されるが、住民の同意を得た上で、その地域の自治体が主導してどんなIRを作るのか、ビジョンの策定や開発戦略を描くことになる。IRの実現には、立地される地方自治体の主体的な取り組みが不可欠と言える。
よく聞かれるのが「IRを作るとギャンブル依存症者を増やすのではないか」という懸念の声だ。日本には既にさまざまな公営ギャンブルがあり、依存度が高い人たちも一定数が存在すると考えられるが、今のところ国による積極的な救済策やセーフティネット作りは行われていない。
既にIRを導入している国ではギャンブル依存症の予防と救済・治療策が国の予算で行われるなど、きちんと制度化されている。日本も今ある問題として向き合って社会的認知を広め、政策として適切な対処を考えるいい機会になると思う。
講演(田中 功 株式会社ユー・エス・ジェイ取締役)
昨年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の入場者数は約1050万人を記録した。開業年の2001年以来、1000万人を超えたのは2度目だ。苦戦した時期もあったが、2010年以降は売上高も好調で、2012年、2013年ともに2ケタ成長を遂げている。
V字回復の主な要因は、マーケティング戦略の転換だ。徹底した調査・分析に基づき、ターゲットをそれまでの若年層から子ども連れのファミリーと独身女性に変更したのである。
また、「ハローキティ」や「ワンピース」など日本発のキャラクターやアニメを積極的に活用し、来年は「進撃の巨人」や「エヴァンゲリオン」などの新イベントが登場する。今やUSJはクールジャパンコンテンツの発信基地と言えるだろう。
我々は大阪のIR構想に大きな関心を寄せている。実現すれば、関西ならではのエンターテインメント空間やサービスを提供する「国際エンターテインメント都市・大阪」の創出が可能と考えている。
USJは、非日常空間の創造や大規模集客運営のスペシャリストとして、このIR構想に貢献できると自負しているが、我々単独で取り組もうとは考えていない。国内外の企業と幅広く連携をとりながら、IRを通じて大阪で新たな価値を創造していきたいと思っている。
パネルディスカッション
モデレーター:白石真澄 関西大学 政策創造学部 教授
横山健一郎 ハイアット・リージェンシー京都 総支配人
東條秀彦 大阪観光局 MICE誘致担当 シニアディレクター
仁木一彦 有限責任監査法人トーマツ
大阪でのIR立地に向けて、必要なこととは何か――。進行役の白石氏の問いから、3名のパネリストによるディスカッションがスタート。
世界のIRに精通する仁木氏は「日本のIRのキーワードは広域連携。大阪の場合は神戸や京都との連携が他国のIRにはない魅力を生み、国際競争力を高める」と語った。
大阪へのMICE(国際会議や展示会などのビジネスイベントの総称)誘致を担当する東條氏は、6月末に大阪・神戸・京都のMICE連携会議が発足したとして、「IRは付加価値の高いMICEを海外から誘致する磁石になり得る。今後は3都市の連携を強化しながら、大阪単独ではなく関西圏としてトータルな魅力を海外に向けて発信していきたい」と述べた。
外資系ホテルの総支配人を務める横山氏は「海外から見た大阪および関西の魅力をあらためて問い直すことが大事。その上で守るべきものと変えるべきものを地域が主体的に選択する必要があるのでは」と語った。
IR推進にあたっての注意点として、仁木氏は「地域住民の合意なくしては進まない」と述べ、懸念材料の一つによく挙げられる景観への影響について「IRはマカオやラスベガスのように豪華絢爛な外観とは限らない。ターゲットを富裕層に特化し、コンパクトで周囲と調和したIRを創造することも可能」と語った。白石氏は「緑と水に囲まれ、環境に配慮した日本独自のIRがあってもいい。富裕層を誘致するには、ビジネスジェットへの対応やヘリポートの設置など、今までとは違う発想によるインフラ整備も必要」と課題を指摘した。
仁木氏は「ショッピングやホテル、エンターテインメントなどはIRのリピーター確保に重要な要素」と語り、来訪者を飽きさせない工夫として「日本のショッピングセンターは増床やテナント入れ替えなど、IRにも生かせるノウハウが多い。完璧に作り込んで一挙開業ではなく、ソフトオープンから常に進化させることで魅力を維持するアプローチもある」と述べた。
「IRビジネスフォーラムOSAKA」レポート
http://special.nikkeibp.co.jp/as/201407/irbf_osaka/
より転載。