IR(総合型リゾート)研究会

ブックレビュー

ブックレビュー第3回

ブックレビュー 「日本版カジノのすべて」

統合型リゾート(IR)に関して学び、多くを知ろうとする者は、日本に存在する関連書籍がいかに少ないかという事実に愕然とし、落胆する。
それも感情論を交えず、客観的に分析した本のなんと少ないことか。残念ながら、現時点において日本国内のIR導入については、推進の人はメリットのみ、反対の人はデメリットのみで考えがちだ。
ここらへんに日本におけるIR導入に対する真剣な国民的議論が盛り上がらない要因が存在するようだ。
その点、本著、「日本版カジノのすべて」(木曽 崇著 日本実業出版社)は、功罪両方について細かく丁寧に説明されている上に、データとしてはよくまとまっているので、基本的な入門書、IRやカジノ問題に関心を持つ方にとってはスタートとして最適な本と言える。
著者で、国際カジノ研究所所長を務める木曽 崇氏は、カジノ経営を米国のネバダ州立大学で学び、実際にカジノの現場で働いた体験を持つ。
本の帯には、「動き出した!景気浮揚の切り札」とIR推進派が読めば喜びそうな景気の良いキャッチフレーズが踊る。
しかし、その道は決して平たんではなく、国会では「IR推進法案」は長らく審議入りも果たせないでいるのが現実だ。
第1章は「なぜ、いまカジノなのか」と題して、日本経済の起爆剤、そして日本の観光立国化への最大かつ最適な方策としてのカジノ合法化と統合型リゾート導入の必要性を説く。
第2章「カジノができるとこうなる!」の第2項は「カジノにまつわる20の素朴な疑問」となっていてわかりやすく多くの疑問に答える一方、依存症や青少年への影響などの「カジノで懸念される罪」、「法制化までにクリアすべき課題」など法律的な事も解説している。
第3章「カジノ解禁で「ヒト・モノ・カネ」が動く!」、第4章「カジノ実現化の「課題」と「功罪」」、第5章「世界の中のカジノ」、そして最終章の「「日本版カジノ」をシミュレーションする」まで、IR(統合型リゾート)ならびにカジノを理解する上で、良質な参考書と言える構成と内容となっている。
「世界のカジノ事情」などについては表やグラフ、写真などが使われている。具体的な実数をあげて、反論、弊害も想定した議論も掲載されている。加えて、各項目数ページずつ区切られているので読みやすく、功罪両方を勉強して、判断するのに適切な本と言えよう。
本著は一般的に創造する「カジノ」のイメージを覆す。なぜカジノ合法化が統合型リゾートとともに語られるか、犯罪率やギャンブル依存症といったリスクとともに正直に、そして丁寧に語る。それだけではない。今後の日本の産業界のあり方までをも問うている。
IR(統合型リゾート)推進法案が通過したとき、IRによって地方活性化を狙うならば、イメージによるカジノをベースに議論を重ねるのではなく、経済効果そしてリスクを伴うカジノを備えたIR(統合型リゾート)の実態を把握していくことこそが必要だろう。
統合型リゾート導入に伴うカジノ合法化、経済活性化ならびに観光立国化という観点から、まずスタートして読むことをお薦めしたい1冊だ。
IR研究会

Page Top