IR(総合型リゾート)研究会

ブックレビュー

ブックレビュー第2回

デービッド・アトキンソン著「新・観光立国論」(東洋経済新報社)

観光後進国ニッポン:日本人の感覚はずれている
真の観光立国になるために必要とされるのは?

繰り返しになるが、今後、日本は超高齢化、少子化による、働き手、稼ぎ手の減少が避けられない。企業も生産拠点を海外へと移している。今後、10年後、20年後、30年後、日本は成長手段をどこに求めるのか。21世紀日本の深刻な課題として、立ちはだかっている。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2026年に日本の人口は1億2000万人を下回り、その後も減少を続けるという。2048年には1億人を割って9913万人、2060年には8674万人になると推計されている。それも高齢者の比率が著しく高い人口構成だ。誰もが成長は難しいと考える。海外から移民を受け入れるべきだという意見もあるが、まだまだ抵抗感を覚える人も多く、言語の壁もあって問題は多い。まさに八方ふさがりといった感じだが、人口を増やす方法、あるいはそれに代わる方策はあるのだろうか。
デービッド・アトキンソン氏は、今年の夏に出版した著書「新・観光立国論」の中で、そんな日本を救うための方策は、「人口減少を補うほど多くの外国人観光客を受け入れる、つまり日本は『観光立国』の道を歩む以外にない」と語り、明確かつ具体的な指針を示している。
日本に住んで25年以上になるアトキンソン氏は、「日本は『観光後進国』だ」と指摘、その著書の中で、外国人として日本人には欠けている視点から、客観的に、冷静に、そして時に情熱を持って、人口減少・高齢化を迎える日本がこれから歩むべき観光戦略を真正面から論じている。
彼によれば、観光立国の条件は、「気候」「自然」「文化」「食事」の4つ。日本人が絶賛する「おもてなし」などは瑣末なことで、高い航空運賃を払ってまで期待することではないと説いている。さまざまなデータを示し、日本人が観光ビジネスで大事だと考えていることがじつはズレていることを明らかにする。その指摘はいちいち納得できるものばかりで、いかに日本政府やメディア、観光関係者が、訪日観光客のマーケティングで勘違いをしているがわかる。
その上で、日本は、前述の四条件、「気候」「自然」「文化」「食事」のすべてを備えた、稀有な国で、なによりも非常に有力な観光立国候補地であると、その理由を詳しく述べ、解析する。
曰く、「日本には「おもてなし文化」などという実態のないぼんやりとした民間信仰よりも、世界に誇れるような観光資源がたくさんあります。それらを正しく発信さえすれば、外国人観光客の増加に結びつくような「高い評価」につながるとすら考えています。だからこそ先ほども申し上げたように、まずは「世界に誇るおもてなし文化」などという先入観を捨て去ることが大切なのです。世界各国にとって、観光業はきわめて重要な産業ですので、熾烈な競争が行なわれています。中途半端な戦略ではこの競争に勝つことはできません。日本も、もっと真剣に取り組むべきなのです。」と。
もし、日本が諸課題をクリアし、外国人客の望む観光地を実現するならば、訪日外国人観光客の数は、2020年までに5600万人。2030年までに8200万人で、GDP成長率は8%を達成できるであろうというのが、著者の描くシナリオだ。少子高齢化の日本で、これから大きく伸びる可能性のあるのが観光業だというのが本書の結論だ。元経済アナリストであるがゆえ、彼の議論は辛口ではあっても、説得力がある。
たいへん面白く、現実的で、希望にあふれた本で、関係者のみならず、多くの日本人に一読を薦めたい、日本経済の希望の書だ。

著者:デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社代表取締役社長。元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年、イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)、2007年に退社。2009年、創業300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、取締役に就任。2010年に代表取締役会長、2011年に同会長兼社長に就任、現在に至る。著書に、イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」(講談社+α新書)、イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言(講談社+α新書)など。
はじめに 日本を救うのは「短期移民」である
第1章 なぜ「短期移民」が必要なのか
第2章 日本人だけが知らない「観光後進国」ニッポン
第3章 「観光資源」として何を発信するか
第4章 「おもてなしで観光立国」にニーズとビジネスの視点を
第5章 観光立国になるためのマーケティングとロジスティクス
第6章 観光立国のためのコンテンツ
おわりに 2020年東京オリンピックという審判の日

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