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2016-02-10 レポート:第6回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」ワーキンググループ・ヒアリング&意見交換(第1回)

観光庁観光戦略課の主催する「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は、訪日外国人旅行者数2000万人の目標達成が視野に入ってきたことを踏まえ、次の時代の新たな目標を定めるとともに、必要な対応の検討を行うための政策会議だ。
内閣官房長官を座長(座長代理は国土交通大臣)とするワーキンググループは、その明日の日本を支える観光ビジョン構想検討の高度化のため、ヒアリングや意見交換等を行う。
平成27年12月1日に第1回が開催されて以来、6回にわたっておこなわれてきた。直近の第6回は平成28年1月26日)に開催され、各界の有識者が一堂に会し、ヘアリングと意見交換がおこなわれた。
以下に第6回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」ワーキンググループでの事務局ヒアリングにおける有識者の主な指摘ポイントを抜粋したものを3回にわたって掲載する。
将来の日本の観光戦略に関しての示唆に富んだ建設的な意見が多く、どれも、大変、参考になるものばかりだ。ご一読ください。

【青柳 正規(文化庁長官)】
○団体客が押し寄せてきている状況が落ち着いたときにリピートして来てもらえるよう、文化を初め、観光基盤ソフトを充実・定着させることが必要。
○英国のように民間寄付を促進するなどの草の根活動が必要。
○観光文化振興に熱意のある自治体は必死に取り組んでおり、そのような地域同士のネットワーク化が必要。
○日本の文化を海外に宣伝・発信できる人が少ない。
○国際的な視野の持ち主が、地域の文化や観光資源などを総合的にマネージメントすることが重要。コンセプト、妥協しない実行力、地元生活者をその気にさせる気概の持ち主が求められる。

【石積 忠夫(一般社団法人日本展示会協会 会長)】
○展示会へ外国人をどう呼び込み、どう観光に繋げていくのかが重要。
○ビジネス客の外国人に観光情報を発信し、観光に繋げることが大切。
○ビジネス客も観光客であり、経済の活性化によりビジネス客の増大もお願いしたい。
○国際的な展示会は他の国際会議等よりも圧倒的多数の集客が見込める。
○海外では国の大統領や首相が展示会に参加し、PRする姿がよくあるが、日本ではほとんどない。もっと閣僚にも展示会に来ていただきたい。
○展示会は1度立ち上げると、毎年の年中行事になるので安定したイベントとなる。
○是非、展示会も含めたMICE政策を政府として打ち出してほしい。

【大西 啓介(株式会社ナビタイムジャパン 代表取締役社長 兼 CEO)】
○インバウンド向けの交通フリーパスの中にはインバウンドにとって不便なものがあると理解している。提供している事業者のエリアによって割引額や購入条件が異なり、例えばNEXCOの場合、フリーパスが有効なエリアから出てしまうと同じNEXCO管内なのに追加で代金が発生するケースもあるようだ。
○地方空港の活性化を促すAir free pass(Japan Rail Passの空路版)の設定を提案したい。インバウンドの「足」が充実しなければ遠隔にある観光地への誘客は難しいし、地方へのリピーター客にはなりにくい。
○都道府県や交通事業者の垣根を越えた連携が必要。直行バスが運行されておらず、インバウンドにとって不便な状態となっているところがある。
○自治体によってはチャーター便などで誘客を図っている所もあるが、この方法での地方送客はあくまで一時しのぎであって、インバウンドにとって手軽な価格帯で航空交通網が利用できる必要がある。

【岡田 裕介(東映株式会社 代表取締役グループ会長)】
○素材と映像が結びつくことで宣伝効果が出る。映像なくして戦略は難しい。
○インターネット配信だけでは不十分。映像の情報伝達力は強力であり、海外の放送局(キー局)の放送枠を買取り現地の方の支持を得られそうな番組を放送すべき。
○観光立国という点では、クールジャパン施策との連携が必要。
○地上波放送への依存が強い国に対しては、日本の番組で現地の方の支持を得られそうな番組を、放送局で時間を決めて流すべき。
○インバウンド施策で外国人観光客を誘致するにあたっては、どのようにして認知させるかという広報的な戦略がより一層必要。
○状況が国ごとに異なっているので、国によって戦略の手段を変えていくべき。さらに、これは民間事業者だけでできる話ではないので、関係各者が共同して進めていく必要がある。

【葛西 憲之(青森県弘前市長)】
○地域間連携により、各市町村にないものはお互いに連携して手に入れていきたい。
○構想はあっても施策のプレイヤーがいない。人材育成と組織自体の育成が必要で、その点ではDMOには非常に興味がある。DMOを立ち上げる際の出資や人材確保の支援は必要なのではないか。
○地域の大学、観光従事者、行政が一体となって人材育成に取り組むべき。
〇市役所の部長級職員に民間の旅行エージェントを活用したが、彼のような観光経営のノウハウを持った人材を置くことが必要。
○無料Wi-Fiについても公共施設は導入が進んでいるが、民間の施設ではまだまだ進んでいないので、支援が必要。
○観光に当たりバス利用のハードルが高い。フリーパスがあると便利。

【加藤 種男(公益社団法人企業メセナ協議会 専務理事)】
○和もの輸出が下手。輸出の前に日本に来たら見られる環境を作る必要がある。
○国際的な視野の持ち主がアートマネジメントすることが重要。
○高齢者が出資してファンドを作り、若者を支援する構想に取り組もうとしている。
○問題は、動きが起こっている地域が孤立していること。お金集めや広報の手法などが分からない。ネットワークさえ確立したら、ノウハウをお互い交換しあって、地域がいきいきしだす。
○文化のようなソフトには、ハードの金額の1割くらいで足りるのに、お金がつきにくい。
○田舎に行きたい人や、仕方ないから都会にいるだけという人は多くいる。地域再生の成功事例として有名な徳島県神山町のように、最初のインセンティブをうまく作れば人は集まる。

【加藤 友康(カトープレジャーグループ 代表取締役CEO)】
○情報提供の面では、自治体などからイベントなどの細かいところまでの情報発信が必要。2~3か月先だけでなく1年を通じてそうした情報があると良い。
○日本には地方でも世界の富裕層に通用するトップレストランがあるので、こうした情報を展開して欲しい。日本のホテル・旅館には富裕層にきめ細やかに対応できる施設は少ない。
○休日の分散化。労働力でもゆとりがでてきて、価格的にも利用者にも安く提供でき、施設側、利用者側お互いが潤う。
○沖縄ではターミナルから出てくるのに時間がかかる。レンタカーを利用しようとするとさらに時間がかかり、空港に到着してからホテルに向かうまで2時間近くかかったケースもある。
○地方リゾートでも人手不足が慢性化している。高齢者、外国人の雇用の促進も考えていくべき。ホスピタリティのレベル向上のため教育体制も重要。ライフワークバランスということで主婦層の取り込みも重要。
○インフォメーションの充実とインフラ整備。特に多言語表示、Wi-Fi環境の整備は重要。

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