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2016-02-12 レポート:第6回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」ワーキンググループ・ヒアリング&意見交換(第2回)

観光庁観光戦略課の主催する「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は、訪日外国人旅行者数2000万人の目標達成が視野に入ってきたことを踏まえ、次の時代の新たな目標を定めるとともに、必要な対応の検討を行うための政策会議だ。内閣官房長官を座長(座長代理は国土交通大臣)とするワーキンググループは、その明日の日本を支える観光ビジョン構想検討の高度化のため、ヒアリングや意見交換等を行う。
平成27年12月1日に第1回が開催されて以来、6回にわたっておこなわれてきた。直近の第6回は平成28年1月26日)に開催され、各界の有識者が一堂に会し、ヘアリングと意見交換がおこなわれた。将来の日本の観光戦略に関しての示唆に富んだ建設的な意見が多く、どれも、大変、参考になる、一読に値するものばかりだ。
以下に第6回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」ワーキンググループでの事務局ヒアリングにおける有識者の主な指摘ポイントを抜粋したものの第2回をお届けする。ご参照ください。

【北川 フラム(公益財団法人福武財団 常任理事、株式会社アートフロントギャラリー 会長)】
○重要な要素としては、①地域の宝を発見する、②他人の土地で地域を開いていく、③地域の人が関わる、といったこと。
○文化活動の持続は、土地に残ったものに敬意を持ち、価値を見出すことが重要。
○フランスでは、キュレーターが来て、集落単位でやりたいことを出していく。そのため、力ある人が自立的にいっぱいやってくる。サラリーマン仕事では上手くいかない。
○住んでいる人たちが誇りを持ち、外からくるお客さんが日常からリセットされ、手伝っている人の喜びであるような地域づくりをやらなくてはならない。
○企画書の書き方だけが上手なところが選ばれていることがある。信用できる人が責任を持って選ばなければならない。

【北原 茂樹(全国旅館ホテル生活衛生共同組合連合会 会長)】
【針谷 了(一般社団法人日本旅館協会 会長)】
○IT化と最新の経営理論を駆使したホテル・旅館経営をすることが重要。
○ホテル・旅館の空室情報が市場に十分に伝わっていない。

【北村 東始扶(JAPAN AVIATION SERVICE株式会社 代表取締役社長)】
○インバウンドの「量」の新たな目標設定は大変重要であり、根本となる。
○ビジネスジェットはインバウンドの「質」の向上に向けたツールとして認識している。
○大規模国際会議の開催に際してのビジネスジェットの乗り入れのボリュームは非常に大きい。
○首都圏にビジネスジェット専用空港が必要。
○ビジネスジェットのほとんどはビジネス目的であり、顧客ニーズは首都圏に集中している。
○ビジネスジェットの拡大はグローバルビジネスの活性化に寄与すると同時に、観光インバウンドの振興にもつながる。

【近藤 幸二(一般社団法人全国旅行業協会 副会長)※他副会長2名】
○受入余地をはるかに超えた訪日外国人観光客の来訪の中で、ホテル・旅館の新築はなく、貸切バスも不足。日本人及び外国人の旅行者へのサービス、安全の確保の面で十分に対応できているのか。
○旅行業界は、インバウンドの急激な増加の影響を受けて、都市部ホテルの予約、日本人国内旅行団体客の予約がとれないなど、国内旅行に影響が生じている。
○ゴールデンルートや大都市など、買い物がメインになるようなところは恩恵を受けているが、その他の地域はあまり恩恵を受けていないのではないか。
○温泉旅館では、日本人客は1部屋に4~5名収容するが、外国人客は1部屋2名程度なので、満室になっても定員に達せず、稼働率の面で厳しいのではないか。
○都心から比較的近い川口や八王子など、東京都心に近いホテルの電車や都心へのアクセスと宿泊をパックにしたPRの方法など、都心からの客を周辺で受入れられる方法を考えるべきではないか。

【坂村 健(東京大学大学院情報学環教授)】
○今後は観光分野でもIoTが重要。総務省では2020年に向けて交通系ICカードやスマートフォンと共通クラウド基盤で連携し、訪日外国人の母国語等の属性に応じた情報提供等のサービスを連携させる取組を行っており、多様な関係業者(ホテル、ドラッグストア、交通事業者、コンビニエンスストア等)が参画している。観光庁も積極的に関わっていただきたい。関係業者、省庁が連携して実現に取り組むべき。
○アンケート調査以外の方法でどのようにデータを取れるのかという手法の研究などを行っていただきたい。
○国はIT等を活用した観光の基礎データや、観光ビッグデータを整備すべき。
○国は観光統計等のデータをオープンデータ化すべき。
○データの整備、活用は、国で統一的なシステムを作り、それを地方に渡せば、それをベースに全国で標準化された基準に則って整備することが可能である。
○Wi-Fiの整備に関しても、すべてを一省庁だけが担うことには限界があるため、各省庁で役割分担し、どのようなエリアにどの程度必要かなどの観光庁に知見がある点は、総務省と連携して、観光庁が主導すべきである。

【白石 徳生(株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長)】
○日本の祭はエンターテイメント性が高い。特に、中国人には日本の伝統的な祭の受けがいい。
○温泉は外国人に人気がある。台湾の方は日本人が知らないような温泉地にも行く。台湾の女性ブロガーを公認して、誘致に成功している例もある。
○地方では、思い切ってモデルケース地域を設定し活性化させていくと、自然と民間ファンドもついてくる。
○有給休暇の取得は、休暇分散と一緒に進められるとより効果的。
○閑散期にはイベントの開催が誘客に効果的。理想は年間を通して何かしらのイベントがあるようにする。
○日本のレンタカーは海外から予約できない事業者がほとんど。
○箱根や湯布院等に所在する企業の保養所を自治体が借り上げて宿泊施設として活用しているケースはある。
○通信に関しては、SIMカードのサービスを進めた方がいい。

【ステファン・シャウエッカー(ジャパンガイド株式会社 代表取締役)】
○外国人目線でのブランディングも必要。
○欧米人は黒澤映画の雰囲気の日本を体験したいと思っている。
○歴史ある観光地で電線や看板、廃屋などをなくすことが必要。草津町では、毎年1つずつ取り組み、10年間ですっかり街並みが綺麗になった。
○箱根フリーパスのように利用しやすい交通系パスの開発・普及が重要。
○インバウンドを増やすには、観光・留学・就労で海外に行く日本人(アウトバウンド)を増やすことも必要。その人たちが日本の魅力を発信するアンバサダーになり得る可能性があり、外から日本を見る視点も育てられる。

【高橋進(株式会社日本総合研究所理事長)】
○投資の拡大については、地域経営の中に位置付けていくべき。
○観光産業の向上のためにも、ピークをならしていくことが大切。
○現役について、親と子が一緒の日に休めることが大切。
○観光関連産業の従業員の処遇改善が重要。
○京都はインバウンドが増えて国内客が減るといったことが起きた。国内を含めた観光全体という視点が重要。
○MICEに必要なお金をどう地域で分担するか、都市としてどうMICEを抱えていくかを考えることが必要。


【玉井常貴(農業法人株式会社秋津野代表取締役社長)】
○地域づくりを昭和30年代からやっているが、都市住民との交流や地域の農産物を味わったり買っていただいたりする取組が、都市と農村の相互理解、地域経済の向上や雇用の増加につながっている。
○農村部は交流人口を増やさないと地域の存続が難しい。農村の暮らしのある美しい風景により、交流人口を惹きつけていくことが重要。
○交流事業を推進する上で拠点が必要。秋津野の場合は、地域住民等が共同で出資して廃校舎を買い取り活用している。
○地域づくりは行政に頼るだけではなく、地域のマスタープランを作成のうえ、地域住民自らが動いていくことが重要である。
○「食」の提供にあたり、アレルギーや宗教的な面については突然対応を求められても難しいが、やり方次第で知恵は出てくる。
○農村地域を維持するためには、若い人材の力も借りて、地域住民が主体となって持続可能な地域づくりをしていく必要がある。

【新浪剛史(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)】
○インバウンドのリピートと宿泊数を増やし、満足して旅行していただくことをサスティナブルにすることが重要。そのためには顧客ニーズをより理解できる人を活用する必要がある。
○各地方空港からの周遊ルートを構築すれば、地方の宿泊は伸びる。
○インバウンドが旅行の閑散期を埋めてくれるものになっていく。
○次のフェーズでは、Wi-Fiやスマートフォンが普及している中で、外国人旅行者にもう1泊してもらえるような、情報発信の仕組み作りが重要。
○IRの実現には是非取り組んでいってほしい。
○中間層の旅館では、バックオフィスの作業は合理化の余地が大きいはず。ICTでマニュアル化し、それを共有すれば非常によい。
○旅館の硬直性と言われる部分は、事前にインターネットで確認し、お客様がいらないものは思い切って切り捨てながら、自社の魅力も提示できる体制を整えることが重要。一方、個客に対応させる部分は省力化しづらいものの、大切なホスピタリティにつながる部分だ。実はここが追加的な収益源になっていく。
○生産性の向上により、非営業的な部分のコストが下がり、お客様サービスの時間を増やせる。モデルを横展開すると個別の取組より安い。
○通訳アプリケーションの開発に国が支援すべき。旅館や商店街で活用可能。

【ハリス・マイケル・ジョン(株式会社キャニオンズ 代表取締役社長)】
○国立公園のハイキングコースの整備や情報提供に地方毎のばらつきがあり、解消が必要。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国立公園は、すべての看板などが統一された形で存在していて観光客にやさしい。
○欧米人を中心に、バリエーションの少なさに飽きてしまう人が多い。日本のアクティビティをアピールすることにより、宿泊を伸ばすことができる。
○アクティビティの会社には規制がないので、クオリティや安全レベルのばらつきが大きい。クオリティの基準があれば外国人もわかりやすい。
○最大の問題は地方に商品開発力がないこと。海外のマーケットを理解していない。DMOについても専門の知識を持っている人が必要。
○地域の競争力強化にはマーケティングのプロを投入する必要。地方でリーダーになれる人はいるので、マーケティングのノウハウ等を学ぶプログラムがあれば情報発信もできる。
○NZではDMOが全事業者から売り上げの0.5%を税金として徴収して運営している。
○日本人が海外に行くことで、日本の良さを海外に伝えるアンバサダーの役割も果たしている。
○交通手段について、情報発信が足りない。外国人にとっての空港アクセスはバスかタクシー。空港から人気の観光地への直行バス路線はぜひほしい。
○外国人は事前決済ができないと予約が入っていないのではないかと不安になる。

【福武 總一郎(株式会社ベネッセホールディングス 最高顧問)】
○30年近い瀬戸内海の直島及び周辺の活動を通して以下の事を実感した。
○今後のキーワードは、「魅力ある個性を持った地域の集合体としての日本」(United Region of Japan)ではないか。それをもっと競わせ支援する仕組みが必要だ。
○人はいいコミュニティに住む事によって幸せになる。そしていいコミュニティとは、「人生の達人であるお年寄りが笑顔で居られる地域」だと考える。「観光」とは、そういった地域での生き生きした暮らしぶりを見て「よく生きる」とは何かを考える場所や空間に行く事だ。
○よそ者が、少なくとも10年はその地域に入り込んで、コミュニティを作り上げていく必要がある。
○情報発信をする際は、世界的な建築家やアーティストと連携すると効果的。
○企業が、文化や地域振興を明確な目的とする財団を創設し、その財団が当該企業の主要株主になり、そこで得られた配当金を原資として、社会に貢献できる仕組みを金融資本主義に代わる日本発の公益資本主義として普及させ、積極的に評価すべきだ。

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