2016-01-20 ■2015年の訪日客、過去最多1973万人を記録 しかし課題も
国土交通省観光局が19日発表した統計によれば、2015年の訪日外国人観光客数は、前年比47.1%増の1973万7400人で、過去最高だった14年の1341万3467人を大幅に上回り、3年連続で過去最高を更新した。
訪日ビザ(査証)の要件緩和や円安などを受けて、中国などアジアを中心に訪日ブームが続き、1964年の統計開始以降、最大の伸びとなったものだ。1000万人を突破した13年から2年でほぼ倍増しており、年間2000万人の政府目標も目前に迫った。
なかでも、ビザの要件が緩和された中国からの訪日客は国・地域別で最も多く、前年の2倍以上の499万人(香港・台湾をのぞく)にのぼった。
同時に、15年の訪日外国人による消費額も発表され、前年比71%増の3兆4771億円で過去最高を記録した。
国・地域別では、中国が1位で約2.1倍の499万人。航空路線の増加や現地での宣伝活動などが寄与した。韓国が同45%増の400万人、台湾が同30%増の367万人と続いた。米国からは16%増の103万人で、欧米諸国で初めて100万人を超えた。伸び率では香港が65%増、ベトナムが49%増と大きく伸び、ロシアをのぞく主要国・地域すべてで、前年を上回った。中国、韓国など4カ国・地域だけで全体の72%を占め、2014年の66%からシェアを伸ばした。一方、欧米や東南アジアからの訪問客も14年比では増えているものの、伸び率では及ばずシェアが低下した。
一方、日本から外国に出かける人は3年連続で減って1621万人。日本にくる外国人数と逆転するのは、大阪万博が開かれた1970年以来、45年ぶりだ。
訪日客が日本滞在中に買い物や宿泊、飲食などに使った消費額を国・地域別で見ると、中国が1位で同約2.5倍の1兆4174億円。中国人観光客による「爆買い」が統計からも裏付けられた形だ。2位が台湾で同47%増の5207億円、3位が韓国で同44%増の3008億円だった。外国人が旅行中に日本で使ったお金の総額は、「自動車部品」の輸出額に匹敵するとのこと。1人あたりでみると17%増の17万6168円だった。円安傾向が続いていることに加え、14年秋に消費税の免税制度の対象が広がったことが大きい。国別では、中国が1人あたり28万3842円と突出している。
■今後の課題
20年までに訪日客2千万人という政府目標は前倒しでほぼ達成されたと言えるが、まだまだ「観光立国」というにはお恥ずかしい限りで、訪日客が2000万人に達したと言っても、世界で16位程度というのが現実だ。
旅行者が多く訪れている東京や大阪などの都市部では、ホテル不足が深刻化している。国際線を受け入れる空港や、宿泊施設の整備などが課題となっている。
また、15年夏以降、中国では為替市場で人民元安が進行しているほか、中国経済の先行き不透明感が増しており、15年のような急激な増加が続くとは考えにくく、中国経済の減速や中国通貨の元安への移行、異常な原油安に端を発した世界経済の停滞などを背景に、勢いが鈍る可能性もある。観光業関係者からは「今後は欧米や東南アジアから、より多くの外国人を受け入れることが重要になる」と指摘する声もあり、15年と同様のペースで訪日外国人数が今後も増加するかは見通せない。
政府は3000万人〜4000万人の目標設定も視野に入れているが、
- ホテルや受け入れ施設、交通網などのインフラの整備
- 定期的に人々を呼び寄せられる観光施設の創設
- いつまでも続けることのできない超金融緩和による円安政策
- 内外の景気の動向などに左右されない観光客誘致政策
など、近未来の日本の経済成長に寄与すると期待されている観光業には現実的な課題は山積みで、待ったなしの状態だ。
やはり、風任せ、追い風頼りではなく、「民泊」などというその場しのぎ的な政策でもなく、景気の動向などに左右されず、毎年多くの人が好んで訪れてくれる観光国、日本を実現するために、明確な意図の下、官民を挙げての長期的視野に立った正攻法のプロジェクトが必要とされている。