2016-01-12 アンヘル・グリアOECD事務総長の興味深い一言
読売新聞11日の朝刊一面に掲載されたOECD事務総長、アンヘル・グリアさんの話はとてもわかりやすく面白かった。
メキシコの外相や財務相を歴任し、スペイン語や英語、仏語など6か国語を自在にあやつるという才人が2016年以降の世界経済について語っているのだが、むずかしい単語や用語を使わず、とても明快にわかりやすく説明してくれている。
世界経済は非常にゆるやかではあっても拡大を続ける。
過去10年間、世界経済のエンジン役を担ってきた新興国は、大きな変化に直面している。
・ブラジルやロシアはリセッション(景気後退)に陥る
・中国、南アフリカ、トルコ、メキシコなどは減速
・好調を維持するインドは稀なケース
多くの国の中央銀行が金融緩和を続ける一方、原油価格が大きく下落、追い風が吹いていてもボートは前には進まない。それは消費者が明日の暮らしに不安を感じていて、消費を控えているせいだ。世界各国でおきているテロも消費者に心理的悪影響を与えている。
しかしテロをきっかけに世界が危機感を共有し始め、西側諸国はロシアとの協議を再開した。
欧州に押し寄せている難民や移民も長い目で見れば成長要因になる。欧州各国も高齢化が進んでいる。難民・移民を受け入れることは生産性の向上につながる。コストは大きいし、リスクもあるが、いずれ報われる。
アベノミクスの「第1の矢」、日銀による金融緩和はうまく機能している。しかし中央銀行は万能ではない。政府が連携して努力しどれだけ効果をあげられるかがカギとなる。
「第2の矢」である財政政策は、もはや限界にある。借金を減らし、財政健全化を成し遂げなければならない。
「第3の矢」は構造改革が中心だ。どんな改革も痛みを伴うものだが、改革を続けなければならない。
日本の課題は出生率の向上だ。人々が「明日はきっと今日より良くなる」と感じられるようになれば、出生率は上がる。自信を与える政策と、女性が働きやすい環境の整備が必要だ。
経済協力開発機構(OECD)加盟国中、日本がもっとも高齢化が進んでいる。年金改革は欠かせず、与野党間の合意が要るし、賃金も上げて行かなければならない。
環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意は日本経済成長の重要な機会となる。日本は、すべての参加国への投資がしやすくなる。
というもので、わかりやすくとても説得力がある。
しかし、個人的には最後のコメントが一番心に残った。
「日本が好きで毎年のように訪れる。これまでに恐らく65回ほど訪問した。桜の季節は本当に魅了される。海外から人がやってくることも、日本にとってチャンスとなる。」
とても胸に響く言葉だ。日本は誰からも愛される素晴らしい国なのだ。それなのに、その良い面が行かされておらず、「観光立国」構想は一向に進めんでいない。
つくづく歯がゆく感じる。
IR研究会