2016-01-08 オピニオン:真の政策論争を!
4日、第190回通常国会が開会、安倍首相が衆参両院で所信表明演説をおこなった。それに引き続き、6日から各党の代表質問がおこなわれた。そして今日から予算委員会が開かれ、本格的な論戦が始まる…ことを期待したい。
いつものことながら、各党の代表質問や委員会での質問、特に野党のそれを聴いていて、そのレベルの低さに哀しくなったり、むなしくなったりするのは私だけだろうか。
一言で表現するなら、「選挙での票欲しさのための粗さがし」とでも言うべきか。政治家にとって、選挙がすべて、最優先、最重要課題になっているせいだろう。論戦は、敵失を衝く、あるいは相手の評判を貶めるような、批判と非難の応酬、レベルの低い言いあいに終始する。やれ給付金は選挙目当てだの、軽減税率の財源はどうするだの、一部官僚の不正を追及することに終始して、根本的な議論は中々おこなわれない。マスコミが大きくスペースを割いてくれたり、面白おかしく採り上げてくれたりするようなスキャンダラスな話題ばかりを探す意識の低さにがっかりする。
民主党が政権の座にあった時に多くの国民の期待を裏切り、失望させたことにより、嫌気のさした有権者が民主党を見放し、棚ボタ式に自民党が政権に復帰、今や公明党と組んで大与党を形成し、余裕を持って、ほぼ思い通りに政権運営をおこなっているのが現状だ。自民党に危機感はあるだろうか? 安定的に長期政権を可能にできると思っている自民や公明の政治家は多いのではないだろうか。冷静的、客観的に観て、当面、民主党が政権に復帰するとは想像しにくい。
安倍晋三首相は民主党の岡田代表の「首相は国民への説明から逃げ回っている」との批判に対し、「ただ反対と声をそろえるだけなら簡単だ。しかし、それぞれの政党が現実を直視し、その解決のための政策提案から逃げ回っているようでは国民の負託に応えられない」と強く応じた。その通りだと思う。民主党や他の野党は反論できるだろうか。
我々は決して安倍首相と政府与党を支持するわけではない。当然ながら是々非々で判断する。しかし、最大野党である民主党はいったい何がしたいのか、何を成し遂げようとするのか、明確なメッセージが伝わってこない。自民党や公明党に対するアンチテーゼは何なのか、あったら、多くの国民にわかりやすく短い文章で伝えてほしい。
今、本当に必要なのはこれからの日本をどうするかだ。この国をどうするのかが問われているのだ。この我々の愛する、美しい日本の自然と環境を守りつつ、日本に住むすべての人々が将来にわたって幸せに暮らせるようにするには、何をどうすべきかを真摯に議論し合ってほしい。批判の応酬からは憎悪以外の何ものも生まれない。
「なるほどそれも一考の余地はあるな」と与党をうならせるような、建設的な対案というものが野党から出てきたことをかつて見た記憶がない。「GDP600兆円」や「一億総活躍」にも異論があるなら、それにかわって、どういうことを成すべきなのか、具体的な提案をしてほしい。
どうすればこの国を活性化できるか、環境を破壊することなく長く繁栄させることができるか、構想を練って、具体的な案を提示してほしい。
本格的な論戦を通じ、政府与党がたじろぐような提案がおこない、実現に向けて最大限の努力をする。それこそが国民から負託を受けた政治家の仕事ではないだろうか? 選挙のための大袈裟なパフォーマンスは見苦しい。
明確で説得力のあるアンチテーゼを示せるなら、野党大連合も理解されるだろう。そのような切磋琢磨を通じてしか、この国を正しく導く政治はなしえないと強く信じる。
そのためにも、我々はこれからも国会の論戦、個々の政治家の言動を注視し続ける。
IR研究会