IR(総合型リゾート)研究会

ブックレビュー

ブックレビュー第4回

苫米地英人著「カジノは日本を救うのか?」(株式会社サイゾー)

マーク付きのカジノ論

読後の正直な感想は二つ。非常に読みやすく書かれている(2時間もあれば読める)ことと、非常にがっかりさせられたことだ。
なぜなら、データに基づかない根拠のない非常に乱暴な決めつけや表現が多く見受けられたことだ。非常に厳しい言い方をすれば、科学者であり、名門カーネギーメロン大学博士とは信じ難い作文だ。
第1章「カジノ解禁について考える」、第2章「日本にカジノを作るべき理由」、第3章「日本にカジノを作るべきではない理由」の三章によって構成される本書を通して、IR(統合型リゾート)議連を筆頭に多くの議員が推進しようとしているIR(統合型リゾート)を中心とした観光政策が、地域創生などになるのか真剣に考察し、カジノを含むIR(統合型リゾート)の経済効果を検証し、ラスヴェガスだけでなく、マカオやシンガポールをモデルに、IR(統合型リゾート)の日本に於ける可能性に就いて考える機会にしたいと考えていただけに、期待は少なからず裏切られた。
まず、「まえがき」に、『本書は、この「IR推進法」について、私たち国民の間でしっかりと議論していく必用があるとの考え方から、賛成意見、反対意見の両方をできる限り客観的に提示して、読者のみなさんととともに「カジノ解禁」についての議論を深めていくことを目的としています』とあるが、残念ながらそうなっていない。客観的ではないのが著者である苫米地博士なのだ。それは読んでいくにつれて明らかになっていく。
そして、苫米地博士はあとがきではっきりと、『両方を客観的に述べるように努めるつもりでしたが、文章の端々に私自身の考えも出てしまったかもしれません』と述べているように、本書は、終始一貫、賛成論も反対論も、IR(統合型リゾート)導入反対の立場に偏って書き進まれている。したがって、賛成論も懐疑的な立場から、論じられているので、賛成論になっていない。
その結果、「カジノ解禁でやってくる外国人はほとんどが中国人で大半の来日目的はマネーロンダリング」とか、「韓国のカジノが失敗したのはVIP客の取り込みに失敗したから、もっと言えばマネーロンダリングができるようになっていなかったから」とか、あるいは「議員や利権を持つ団体や人間は賄賂をなるべく長期にわたって多く取りたいと願っている」等、暴言に近い、思い込みの、何のデータや論理の裏付けのない、決めつけるような浅薄な文章が目立ち、ガッカリした。IR(統合型リゾート)反対派のレベルの高い論旨を読みたかっただけに残念だ。
表紙に大きなクエスチョンマークが付いているが、苫米地博士の根拠に乏しく乱暴なカジノ論にこそ、大きなクエスチョンマークを付けたい。リスクのないビジネスなど存在せず、リスクがあるからこそリターンが望めるわけで、そのリスクをどのように抑えて、大きなリターンを得るかを述べていただきたかった。
いみじくも先生が本書の中で書いておられるように、『ただ、この論理にはやや飛躍と言いますか、無理があるように感じます。(中略)ここも「結論ありき」の拙速な判断をせず…』と、もっと事実と客観的な分析に基づいて論評していただきたかったと思うのは我々だけだろうか。

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