IRビジネス研究会

レポート

IR*ゲーミング学会 第11回シンポジウム レポート


IR*ゲーミング学会(谷岡一郎会長)の第11回シンポジウムが、2015年11月29 日(日)、大阪商業大学において、第1部がゲーミング部会、第2部がIR部会という構成で開催された。


第1部「ゲーミング部会」においては、「絵双六~その起源と庶民文化~」と題して文学博士で絵双六研究家の桝田静代氏による講演、並びに質疑応答がおこなわれた。
長い歴史をもつ絵双六、13年に及ぶ桝田氏の双六調査と絵双六の構成要素であるコマの詳細な考察を基に絵双六の起源や特徴を紹介。絵双六は曼荼羅や寺子屋、親子、女性の生き方、竜宮など多様なテーマを用いて作られ時代を重ねて楽しまれた。同時にゲーム感覚で様々な体験や知識も得られる双六の世界を紹介。特に幕末期の女性たち、その多様な生き方が映し出された「新販女庭訓振分雙六」を通して、女性の生き方についてもユーモアを交えての紹介があり、とても示唆に富んだ内容であった。


第2部の「IR部会」は、前半と後半に分かれており、前半は、薬物も含めた依存症関連の国としての治療・調査研究機関である、シンガポール国立依存症管理サービス機構(NAMS=National Addiction Management Service)医療委員会副会長のChristopher Cheok Cheng Soon博士による講演ならびに質疑応答だった。テーマは〝通説と現実 - シンガポールにおける問題賭博行動への取り組み″で、シンガポールにおける問題賭博行動への取り組みについて、データと画像を駆使して詳細にわかりやすく説明してくれた。


コンテンツは、
- シンガポールの賭博:賭博はシンガポールの歴史、文化の一部であること
- 現代のシンガポールにおける賭博:非合法(家庭、葬式)、公式(くじ、スポーツ賭博、競馬、スロットルマシン設置所、カジノ=2010年より)、クルーズ船、非合法(オンライン、賭博場、非合法くじ)
- 2010年カジノ開設:2つのカジノ ①マリーナ・ベイ・サンズ ②ロゾート・ワールド・セントーサ
- カジノ:①収入(総収入:約6,500億円=大人1人あたり約21万3千円 ②1日当たり訪問者(平均17,000人/日=大人人口の0.55%)
- 賭博に関する規則と取締機関:①法律(カジノ管理法=Casino Control Act)、一般賭博施設法(Common Gaming Houses Act)、賭博法(Betting Act)、遠隔賭博法(Remote Gambling Act) ②取締機関:カジノ規制機構(Casino Regulatory Authority)、賭博依存症国家評議会(National Council for Problem Gambling)、社会・家族開発省賭博安全措置部(Gambling Safeguards Division at Ministry of Social and Family Development)、国家依存症管理機構(National Addictions Management Service)
- 病的賭博:①持続的かつ反復性のある不適応な賭博行為 ②自身、家族、職への従事を顧みない ③他のメンタルヘルスコンディションでは良く説明がつかない
- 病的賭博の安全予防措置:予防教育、入場料、排除命令、カジノ入場制限
- 排除命令:①自己=自主的 ②家族=問題賭博行為者の家族 ③雇用者=組織による促進 ④第三者=弱者を排除(例:低所得者、頻繁に訪れる者) ⑤自動=社会福祉援助を受けている者
- 取り消し:①排除命令の取り消しは12か月間不可 ②排除命令取り消し前にカウンセラーによる査定が必要 ③査定後に取り消しの決定を判断
- 介入:国家問題賭博ホットラインとウェブチャット、コミュニティ・カウンセリングセンター、国家依存症管理機構(①即日対応、②多額の助成金=80%超 ③認知行動療法 ④家族療法 ⑤グループ療法とサポートグループ、電子介入、クレジット管理、カジノ関連犯罪への警察の強制力
というものだった。
講演後、活発な質疑応答がおこなわれ、参加者全員からの大きな拍手とともに終了した。


第2部「IR部会」の後半は、パネルディスカッションで、「政策論としてのギャンブル依存症問題」というテーマの下、佐々木一彰氏(日本大学専任講師)のコーディネートで、三宅隆之代表(一般社団法人セレニティパークジャパン)、佐藤 拓院長(成瀬メンタルクリニック)、大谷信盛氏(元衆議院議員)、美原融学会副長の四名のパネラーとともにおこなわれた。
「ギャンブル依存症」の疑いある人が、国内に536万人いるとする推計を厚生労働省研究班が発表して以来、536万人という数値のみが一人歩きしている状況と現場の実情について専門家から意見を聴き、どういった対策を施すべきかについて活発に意見を交わし合った。意見の中には、政府や国会議員に対する建設的な提案も含まれており、これまた、とても示唆に富んだディスカッションに終始した。


最後に、学会長であり大阪商業大学学長である谷岡一郎教授が閉会の挨拶をし、「536万人がギャンブル依存症という発表の原典を探したが、なんと49文字しか記述がなかった。それをもとに記者発表された。その根拠となる数値は公開されていない。公開質問状を出しても答えてくれない。研究者のひとりとして、536万人だけが一人歩きしていることを非常にいぶかしく思っている。ギャンブル依存症については、国のいろいろな機関が連携して対処していくべきと考える。私達は、学術研究、調査、海外での 事例等、長年研究してきた。ただし、私たちはカジノを作るために研究活動をしているのではない。もし、IR施設を日本につくるのであれば、より良いものを作ってほしい。そのためには役立ちたい。IR法案がどうなるかわかりませんが、よりよい我が国のIRになるよう研究活動は今後も行なっていく。」と締めくくり、IR*ゲーミング学会の活動意義を述べて、シンポジウムを終えた。


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