IR(総合型リゾート)研究会

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2016-02-15 レポート:第6回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」ワーキンググループ・ヒアリング&意見交換(第3回)

観光庁観光戦略課の主催する「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は、訪日外国人旅行者数2000万人の目標達成が視野に入ってきたことを踏まえ、次の時代の新たな目標を定めるとともに、必要な対応の検討を行うための政策会議だ。内閣官房長官を座長(座長代理は国土交通大臣)とするワーキンググループは、その明日の日本を支える観光ビジョン構想検討の高度化のため、ヒアリングや意見交換等を行う。
平成27年12月1日に第1回が開催されて以来、6回にわたっておこなわれてきた。直近の第6回は平成28年1月26日)に開催され、各界の有識者が一堂に会し、ヘアリングと意見交換がおこなわれた。将来の日本の観光戦略に関しての示唆に富んだ建設的な意見が多く、どれも、大変、参考になる、一読に値するものばかりだ。
以下に第6回「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」ワーキンググループでの事務局ヒアリングにおける有識者の主な指摘ポイントを抜粋したものの第3回(最終回)をお届けする。ご参照ください。

【星野 佳路(株式会社星野リゾート 代表)】
○国有林の活用に苦労している。白神山地では世界遺産に指定されてから集客が減っている。
○宿泊業以外の土産物屋レストランにも地方の観光組合に入ってもらう必要がある。
○若者の旅行参加率が落ちている。目標設定をして増やしていくべき。
○年間100日に集中する需要を分散させることがポイント。地方にも健全な競争環境の存在が重要である。
○観光の総需要はある。問題は利益が出ていないこと。利益がでないところに投資はない。生産性を向上させるには、まず経営者の実力。作業効率を上げることやトレーニングシステム、需要予測が重要。サービス残業を放置していることは問題。
○生産性・収益性を高めるため、競争が必要。
○利益を出して雇用を呼び、投資に結びつけていくことが重要。
○投資はノウハウとセットでなければ意味が無い。経営者の延命ではなく、労働環境が上がるようにしなければならない。

【本保 芳明(東京工業大学特任教授)】
○産業競争力の強化が必要。旅行会社やホテルチェーンなどが海外でビジネスをする際の支援の仕組みなどを構築していく必要がある。
○観光ベンチャーの育成システムを立ち上げることも必要なのではないか。
○スキー場はニセコのように国際リゾートとして大化けする可能性があり、外資系のファンドが投資しやすい環境を整備する必要がある。
○国際的に英語圏で活躍している教員を活用するための環境整備が全くできていない。
○観光のMBAのような仕組みを構築できればよいが、担当する教員の確保も難しく、学生を集めて経営が成り立つかの見通しが困難。
○観光を推進している大学において、大学と産業界との間でカリキュラムや育成方針を議論する場をつくってもいいのではないか。

【増田 寛也(東京大学公共政策大学院 客員教授)】
○観光の中で、自然も文化財も伝統芸能も農業も使っていく。規制を少し緩めることも必要。観光客にも金銭的に負担してもらい保存の財源に。利用・保存の双方がより強く・より良くなる関係が重要。
○守るべき風景などは徹底的に維持すべき。そのためには、原風景を維持して、そこに人が集まってくる成功事例を示すことで素晴らしいところとの落差を見せると広告や景観に対する規制への理解が得られやすい。
○地域は誰に相談していいか解らず困っている。Step by Stepのアドバイスが必要。観光カリスマみたいな人が手厚く継続して指導することが必要。
○数人のチームで地域に入り、改革できる人材を派遣する仕組みが必要。併せてチームが使える投資マネーも一部つけると改革が進む。若者実働部隊の派遣も必要。
○東北の持つ静かな環境に親しみたい人々を呼び込む仕掛け・メニューが必要。
○地域にいる障がいを有する方々や高齢者を巻き込むことで人材に広がりができる。

【眞野 ナオミ(株式会社ラグジュリーク 代表取締役社長)】
○情報発信をする際は、世界的な建築家やアーティストと連携すると効果的。
○富裕層は強いこだわりをもって日本へ来るので、パッケージ化できるものではない。
○富裕層は、臨機応変に対応できる企業や店舗が求められる。特に食へのこだわりは強く、日本のスタイルだとしても富裕層に合わせなければいけない。
○日本人は英語が話せないというイメージを変えて、日本にアクセスしやすくすることが大切。
○富裕層をどう満足させたいのかを理解することが重要。
○富裕層は、日本人のこだわりを受け入れられないこともあるため、臨機応変な対応が求められる。特に「食」へのこだわりが強い。

【三木谷 浩史(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)】
○訪日外国人旅行者をフォローアップする仕組みを作れないか。直接の声が入れば、改善すべきポイントが明確になる。
○低廉な航空運賃は旅行需要活性化のカギであり、LCCの拡大が必要。4D管制で容量を充実強化することや横田基地の活用を図るべき。
○これからは車を持つのではなくシェアするようになる。日本でもライドシェアができるようにすることが必要。
○海外ではAirbnbがなければ旅行に行かないという人もいる。ホームシェア(民泊)の導入にもっと前向きに対応すべき。
○日本だけがFelicaを使っていることが将来問題にならないか。外国人旅行者が使える世界標準のNFCのType-A、Type-Bが利用可能な環境を整えるべき。
○イスラエルでは10万円以上の支払いはキャッシュレス決済にしなければならない。電子マネーの利用により消費額が増えるはずである。キャッシュレス決済をマストにするのも一つのアイデア。
○地方の観光産業の労働力が足りていない。労働力確保のためビザの緩和は必須。
○オープンな無料Wi-Fiを日本全国に広げるべき。Wi-Fi環境を利用して楽しかった経験をSNS等で広げてもらえれば、日本に行きたい人が増える。これらと様々な制度の整備を図れば1億人は自然体で達成できる。

【御立 尚資(ボストン・コンサルティング・グループ シニア・パートナーアンド・マネージング・ディレクター)】
○重要なのは、観光産業の生産性向上を通じた賃金アップと正規雇用増、財政出動を極小化したボトルネックの除去、地域自身の意欲と能力向上、の3点。
○生産性向上には、高単価顧客の取り込み、そして観光産業のオペレーション効率改善が不可欠。
○高単価顧客獲得には、すべての空港へのプライオリティレーン設置など、一種差別的な扱いを行うことが必要。
○オペレーション効率をあげるには、小規模事業者が多数分散している業界構造、ならびに調理、フロント、接客など縦割りで人の稼働率があがりにくい事業特性を前提に施策を打たねばならない。
○「小規模事業者自身では構築できない、予約・顧客管理・プライシングのマネーと地域事業者を結ぶようなプラットフォー ム」を作り上げる、といった仕掛けは有効なはず。観光地や宿泊先のレーティ ングも、公的な機関がやるのではなく、ユーザーレビューを活用したトリップ アドバイザーなどに近い仕組みの方が効果的。マネージメントを可能にするクラウドサービスなど、デジタルプラットフォームの立ち上げ」を支援する、さらには、「地域の歴史・文化や魅力を多言語で発信するためのサポーターNPOと地域事業者を結ぶSNSのようなプラットフォーム」を作り上げる、といった仕掛けは有効なはず。観光地や宿泊先のレーティングも、公的な機関がやるのではなく、ユーザーレビューを活用したトリップアドバイザーなどに近い仕組みの方が効果的。
○旅館のオペレーション効率改善には、多能工化による人の稼働率向上、業務の定型化による教育訓練効率のアップ、などの手がある。
○賃金をあげていく上では、ツーリズム業界の中堅人材を教育する機関が必要。工業化の時代に、工業高専ができたように、地方にサービス高専を作ることも一案だと思う。
○現在のボトルネックのうち、宿泊施設は投資までの時間差という側面もある。地域によっては、容積率見直しなどが必要だが、投資意欲自体は高まっている。
○インフラのボトルネックとしては、ソフトインフラだがCIQの問題が大きい。ここも民間委託、IT化を徹底して、公務員定数が増え続けることは避けるべき。空港、港などのハードインフラはコンセッションがやはり有効。

【宮田亮平(東京藝術大学学長)】
○日本は「祭り」が魅力。日本全国の各地域の祭りを世界にPRすべき。
○総合的に進めていくことは大切。観光は芸術、観光は人、観光は歴史。このままではリピーターは来ない。
○鯖江の技術はすごい。再びこれを使おうとしてくれることになれば、それは技術によるリピーター。我が国の技術やデザインは、鍛えてもらいたい。
○「芸術」を、観光立国を進めるための柱の一つに入れてほしい。
○田舎の風景を守ることも大切。アンドレマルローは、公共事業の1%を無条件で環境に費やすといったことを行った。そのような絶対的な制度を日本でも作るべきである。
○ベネチアのようにコンセプトが統一された都市作りを進めるべき。
○フランスのナント市では、文化や芸術が大切だということを、教育で浸透させた。何年もかかったが文化が大切だと思う市民にした。
○標識がないことは問題。四つ辻の信号にも何も書いてないこともある。

【村瀬茂髙(WILLERTRAVEL株式会社代表取締役)】
○分かりやすい指標で地方毎の数値目標を、作るべき。地方でビジネスが成立することを予感させるような仕組みや動機付けが構築出来れば、自然と地方への投資が促進される。
○成田、関空や中部などの主要国際空港から全国各地の観光地へ高速バス路線が設置され、空港から簡単にどこへでも行けるといった意識付けが重要。高速バスの「想起率」を更に高め、「安く」て「便利な」高速バスの魅力を認識させ、更に定着させることが必要。
○現在の外国人労働者に対するネガティブなイメージを国民全体の意識改革でポジティブなイメージにすることが必要。外国人労働者に対するネガティブなイメージを払拭することで、旅行業界、輸送業界の人不足問題が解消し、観光産業全体のプレゼンス向上に繋がる。
○プロフェッショナルの育成と新規事業者を支援する仕組みが必要。観光MBAの学科を絶対に作るべき。多くの有為な人材の輩出を期待したい。競争を生まないと産業が活性化していかず、このままでは下火。
○旅行・観光の伸びや活性化が人・社会を豊かにするということを示す統計指標およびその目標化が必要。目標を示すことで事業する側も展開しやすくなる。また旅行・観光に携わり、働いている人が誇りを持ち、その所得水準も向上することにより、優秀な人材の流入はもとより地方に職と人が増えることが理想。
○現在のわが国の公共交通は地元の人には定着している反面、国内他都市在住者や訪日外国人に対しての情報提供は不足気味。
○日本は個人旅行がしにくい。公共交通自体は充実しているが、二地点間輸送を想定しており周遊する輸送機関相互の接続情報と仕組みが不足。その結果パッケージツアーやレンタカー利用が多くなる。スイスでは国・地方政府と各交通事業者の協力によって、鉄道やバスの連携がなされている。ニーズの高いルートで接続性を持たせ、公共交通と旅行の主要3要素(食、観光、買物)を相乗効果が出るように磨いていくことが大事。

【山内 弘隆(一橋大学大学院商学研究科 教授)】
○どのような人材を育成すべきかについて関係者で意見交換をしながら、観光人材育成を進めることが必要である。
○教える側の人材確保は課題。MBAクラスの教育ができて、かつ観光の現場を知っている人はほとんどいない。
○DMOの人材育成には、MBAのような修士号が必要。ただし、DMOではもっと教える人材がいないと思慮。
○新しく学科を立ち上げることは簡単ではない。
○教育では、理論と実践を併せ持った教育を施すことが必要。

【渡邊 准(株式会社地域経済活性化支援機構 常務取締役)】
○顧客ニーズをより理解できる人を活用する必要がある。
○観光業に多い零細企業は顧客ニーズをリアルタイムで得る術がないので、国に観光データの整備をお願いしたい。
○旅館の泊食分離は生産性向上の他、地域内回遊効果もある。
○成功している事業者の下に、零細事業者を集約するのも一つの手。
○地域の大学と観光従事者、行政が一体となって人材育成に取り組む仕組みを広げていかないといけない。

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